人が馬に乗るために欠かせない「鞍」。「革」に安全・安定の「安」と書いて「くら」と読みます。英語では「SADDLE-サドル-」、馬具の製造からはじまったソメスサドルも名前にSADDLEを使っています。
乗る人の命はもちろん、馬の安全も左右する鞍は、両者を繋ぐ重要な生命線とも言えるツールです。
一見シンプルに見える外見の中には、両者の安全を守る為の、実に緻密で繊細な造りが施されています。
今回は数ある鞍の中から、乗馬用の総合鞍を例に、鞍の内部を詳しくご紹介します。
人が座るシート部。鞍の内部と馬、脚の接触を防ぐあおり。馬と人間の脚とのコンタクトの部分になる鞍じょく。ニーパッドは騎乗時の膝の支えとなります。馬具のモチーフとして、ソメスのバッグや小物に使われている鞍鋲は、留め具として重要な役割を担っています。
鞍の内部には「鞍骨-あんこつ-」とよばれる、鞍を形作るパーツがあります。鞍骨はシート面と馬の背に触れる面の両面を形作る役割を果たします。
鞍の乗りやすさは鞍骨で決まるといっても過言ではありません。馬は鞍と乗り手の体重が負荷としてかかるので、鞍の形状が馬の背に合わず安定しないと、馬の背中や腰などを痛めてしまう場合もあります。
あおり革の内部には腹帯託革が3本、左右合わせて6本あります。託革は、鞍を馬の背に固定する腹帯を接続するパーツです。馬の腹を通すベルト状の腹帯は、両端にある美錠で託革と接続されます。
鞍が動かないようきつく固定されるため、託革には強い負荷がかかり消耗しやすく、伸びや革切れが発生します。
ファクトリーで受ける鞍の修理の多くは、託革の伸びや革切れによる交換修理です。また腹帯のゴムの伸びによる交換修理も多く寄せられます。
腹帯の美錠とあおりとの接触を防ぐ美錠保護革は、ソメスのメンズバッグ「ハロン」シリーズにもモチーフとしてデザインが施されています。
ハロンを詳しく見る馬に乗るためには、一般的には鞍と腹帯、鐙革、鐙金の4点が必要です。
鐙は人が馬に乗る際のに足を掛ける部分になり、騎乗時はバランスを取る支えにもなります。小あおりの内部にあるスティラップバーは、鐙金が繋がる「鐙革」を接続するパーツです。腹帯と同様に美錠が備えられ、乗る人に合わせて長さを調整しスティラップバーと接続します。
馬と人を繋ぎ、命を預かる馬具は、安全と質が何より求められる道具。負荷に耐えうる素材選びから、細部の一縫いに到るまで、妥協は許されません。
ソメスサドルでは、創業から約半世紀をかけ受け継いできた手仕事の技術で、これからも馬具を作り続けます。
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