時を重ねても
愛され続けるものを目指して
ボストンバッグ 制作の裏側
暮らしに寄り添う革製品。ソメスファンの皆さまなら、バッグや、財布など身近な存在として日々ご愛用いただいていることかと思います。
馬具づくりからはじまった、半世紀以上のものづくり。
ソメスサドルは今年で60周年を迎えます。
日々ものづくりと向き合いながら、技術を受け継ぎ積み重ねてきた60年、
その集大成として特別な「ボストンバッグ」をつくります。
ソメスサドルの技術の粋が詰まった至極の逸品、
皆さまの手にお届けするその前に、製造の裏側をご紹介いたします。
重さに負けない堅牢なハンドル
たっぷりと荷物が入るボストンバッグ。ハンドルには重さに負けない堅牢度が求められます。
硬くしなやかな革芯を厚口の牛革で包みミシン掛け。ソメスでは、手に馴染みやすくて切れにくい革芯をバッグのハンドルに用います。そして金具に繋がるハンドルの根元は、馬具由来の2本針による手縫いを施し、長く愛用できる丈夫なハンドルに仕上げています。
バッグのサイズに倣わず、ソメスのハンドルは同等の太さで設計されています。手に馴染みしっかりと握り締められる、「持ちやすさ」を追求した結果です。
大きなボストンでもどこか洗練されたスマートさを感じる理由は、装飾としてではなく機能性の探求から得られたバランスによるものかもしれません。
また、ハンドルの作業工程で要の一つとなるのが、製品の美観を大きく左右するコバ仕上げです。やすりで番手を変えながら表面をなめらかに。そしてコバ塗りしてやすり掛け、さらにまた塗ってはやすり掛けの繰り返し….小さなパーツですが丁寧に仕上げていきます。
口枠は馬具由来のサドルステッチで
ボストンの口元は、ダレスバッグのつくりを応用したクラシックな口枠を採用しました。
口元がしっかりと大きく開き、中が見やすく荷物へのアクセスもスムーズ。大きな動きの開閉は本体への負荷も大きいため、太目の糸を用いた馬具由来の2本針手縫いによるサドルステッチで強固に縫製しています。
口枠の縫い合わせは、ボストンの製作の中で一番大変な作業。
バッグの形がほぼ出来上がった終盤の工程での縫製はなかなか難しい作業です。手縫いなので時間も掛かりますが、全体のフォルムや見栄えにも関わる重要な工程の為、丁寧かつ慎重に縫っていきます。手縫いはミシンと違って太目の糸を使うので、ステッチの良し悪しが如実に現れます。苦労した箇所なので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。
横顔の美しさ
口枠型のバッグで特徴的なのは側面の形。開いた時はまっすぐスッと立ちあがり、閉じた時は美しい曲線を描きます。
丸みのある横マチのあの特徴的な形は、芯の貼り方で決まります。
硬い芯でハリが出て、芯を貼らない箇所が折り目になる仕組み。側面の芯は底から口枠まで3枚に分けて貼り合わせます。その芯は口枠の重さに耐えるための補強も担っているのです。
口枠の開閉で革が動く分、周辺の革もヘタれやすくなる。口枠を閉じている時の美しさと、開いた時もヘタれずハリのある形状を保つバランスには苦労し、試作を重ねながら修正しました。側面の形は、ボストンバッグのクオリティーを左右する大事な箇所。時間を要しましたが、壁を乗り越えた達成感はひとしおでした。
60周年ボストンバッグ、実はまだ試作を重ねている段階です。
皆さまの手にお届けできるには、まだ少しお時間をいただきます。
これからは発売のご案内に先駆けて、製造に携わるファクトリーの職人たちの声をお届けしてゆきます。